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臨月に起業!?低アルコール市場の第一想起を目指す新星「koyoi」を生んだ原体験とは
「正気のサタン」を始めとし、年々、低アルコールドリンクの需要が増加していることを身をもって感じています。そんな中、2021年から低アルコールカクテルの需要に注目し、わずか2年で着実に認知拡大を続ける「koyoi」ブランドを立ち上げたきっかけは何だったのでしょう。
「とりあえず、ビールで!」のような風潮が当たり前の時代から、コロナ禍を経てお酒を飲む人も飲まない人も、自分の体質、気分やシーンに合わせて、適切なドリンクを楽しむ飲み方の多様性が増えていますよね。
たとえばビールでは、スーパードライが好きな人もいれば、サッポロビールしか飲まない方もいるなど、たくさんのブランドの選択肢があります。一方で、低アルコール市場だけを見ると「ほろよい」が一強の市場になっているんです。
言われてみれば、お酒があまり得意ではない人と飲む時は「アルコール度数の少ないお酒を買う?」ではなく「ほろよい、買う?」とブランド指名買いです…!
「ほろよい」は約15年ほどのブランドですが、その間にブランド認知に加わるブランドが出てきていないとも言い換えられます。
だから、スタートアップで起業するにあたり、ゼロからブランドを築き、ファンを形成する戦略的なアプローチが市場と合うのではないかと考えました。
マーケティング視点で、低アルコール市場だけがぽっかりと空いていたということですね。
はい。しかし、低アルコールカクテル事業を行う目的で起業したわけではなく、私の起業は戦略よりも想いの方が強かったです。
「これだけはやり通す」という生き方だけ決めて起業しましたが、当時はまだなんの事業をするかは決まっていませんでした。
生き方、ですか?
私の人生のテーマに「社会における女性の自立」があります。
女性はどうしても仕事を頑張りたい時期と、様々なライフイベントのタイミングが重なり「両立」というテーマがよく議論に上がります。私自身、妊娠するまでは「頑張れば両立できる」と考えていたのですが、実際に妊娠した時に人生で初めて「仕事を辞めたい…」と思ったんです。
私は自分自身をワーカホリックだと自負しています。その私が仕事と生活の両立を無理だと諦めてしまったら、大多数の女性の両立が難しいことを証明してしまうのではと思い、2017年の臨月の時に創業しました。
えっ、臨月に創業ですか?!なぜ、そのタイミングだったのでしょう。
自分の決めた生き方を諦めるなよという戒めと、逃げ道を塞ぐ意味もありました。
起業後は、事業内容を決めるために100の事業案を考えて、テストマーケティングを繰り返し、「自分の人生を捧げられる事業」を探していました。
事業として低アルコールドリンク事業に「人生を掲げられる」と決断できた理由はなんだったのでしょう。
24歳の時に父が急死した原因がアルコール依存症だったという原体験が基になっています。
昔から、人がお酒に飲まれる姿を目の当たりにしてきて、現在でもお酒の被害は絶えません。しかし、私も成人してお酒を嗜むようになると、お酒のある空間は人と人とを繋げてくれるだけではなく、嬉しいことがあれば飲みたくなるなど癒やしの側面もあると感じたんです。
歴史的にも、結婚式などのハレの日をはじめ、お祝いの席にお酒は必ず置いてありますよね。つまり、お酒は人類の歴史と共に歩んできた趣向品であり、本来は人を幸せにするツールなんです。だから、お酒の良いところだけを抽出して、より安心して飲めるものを自分で作ってみようと思い立ったのが理由です。
なるほど!原体験が事業への想いの強さに繋がるのですね。
2021年からお酒の事業をやっていますが、父親が生きている時にこの商品があれば人生も変わっていたかもしれないと思いながら、必死に商品を作りました。その過程で、応援してくださる方や商品を購入してくれるお客さまが増え、低アルコールドリンクの明確なニーズと社会への必要性を感じました。
そのため、「koyoi」を通じて多くの人が幸せるなる社会を作りたいという想いが今に繋がっています。
お酒とシーンを通じてつながる「koyoi」のプロセスエコノミーとシーンペアリリングの魅力
「koyoi」はブランドの世界観から商品のコンセプトまでかなり細かい所まで作り込まれている印象を持ちます。ブランドコンセプトや商品設計はどのようにされているのでしょうか。
「プロセスエコノミー」について、もう少し詳しくお伺いできますか?
直近リリースしたばかりの「AWANOHI」の商品ローンチ後に「730mlのフルボトルだと2人で飲みきれないから、ハーフサイズのボトルで売って欲しい」というご意見を頂き、商品ローンチ2週間後に275mlのミニボトルを作ったんです。このように、お客さまのニーズを商品に反映しながら、一緒にブランドを作り上げているのが特徴の1つです。
toCのモノ作りにおいて、私たちが想定できる部分もあれば、お客さまの意見を取り入れることでより良くしていくことができる部分もあると思っています。
そしてプロダクトアウトではない「koyoi」だからできる、お客さまを巻き込みながらエンゲージメントをあげていくブランド作りを行っています。
新商品ローンチ後、2週間でお客さまの意見を反映した商品をリリースできるスピード感はすごいですね!シーンペアリリングについてもお伺いできますか。
嗜好品というお酒そのものの価値以外にもお酒の価値を再定義しました。
たとえば、野球場で飲むビールがすごく美味しいと感じることはありませんか?
わかります〜!なんで野球場で飲むビールってあんなに美味しいんですかね。
そうですよね。それ以外にも好きな人と飲むカクテルと、自宅で1人で飲むカクテルでは違う味に感じることもありますよね。つまり、お酒は様々なシーンに紐づくことが多いこと思いました。
そこから「koyoi」では、お酒を片手に飲みたくなるシーンを開発し、シーンに合うお酒を逆算して味をイメージして作っています。
お客さまと一緒にブランドを作り上げていく上で、具体的にどのようにお客さまの意見を取り入れられていますか。
購入いただいたお客さまに答えがあると思っています。
そのため、顧客データはもちろん、不定期で定量アンケートも実施しています。その他にも、LINEなどのSNSを通じて直接お客さまに連絡を取り、1人1人にお時間を頂きヒアリングをさせて頂くこともあります。
「koyoi」のブランドリリース前の、顧客がいない時はどのように行っていましたか。
想定するターゲットに近い友人や「koyoi」を飲んでほしい人たちにお声がけをしてアンケートを取っていました。
「koyoi」の場合は「どういうシーンで飲みたいか」という質問に加えて、妄想でも実際の体験でも良いので「お酒を片手にときめいたシーン」を約200人にアンケートをしました。
その結果、十人十色の答えが300案ぐらい出るんですよ。頂いたアイディアの中には被るシーンもあれば、個性的で面白いシーンもあり、私たちでは想定し得なかったたくさんのシーンの発見がありました。
想定し得なかった個性的なシーンが気になります…!
少しマニアックなんですが、女性が仲が良いと思っていた男友達と飲んでいた時、たまたま2人っきりで話しすふとした瞬間に「好きかも」と思う甘酸っぱさ、です。
そのシーンから実際に作ったカクテルが「Peachfull moment」です。
そして「koyoi」の商品全てに、商品をイメージしたシーンを小説にしたポストカードを同梱しており、ストーリーをイメージしながらカクテルをお楽しみ頂くことができます。
お客さまから頂いたエピソードが実際に商品になることもあるんですね!しかし、300案もあったらすべての商品を作りたくなってしまいませんか?
そうなんです。しかし、シーンに対してイメージするお酒の色や材料を組み合わせた時の実現可能性を加味して「このシーンだったら絶対にお酒を飲みたくなる」というわかりやすいシーンを選ぶようにしています。
その中でも、数は多くはないですが「Peachfull moment」のようにターゲットにとって少女漫画的な憧れやときめきがあるイレギュラーな味も作ったりします。最終判断は私の趣味ですね(笑)
Eコマース率3%のお酒業界で挑む、商品ではなく体験を届ける「koyoi」が築く新しい出会いのカタチとは?
お客さまの声を反映しつつ一緒にブランドを築き上げていく中で、難しいと感じる場面はありますか?
日本のお酒市場は、スーパーやコンビニに行けば100〜300円の安い価格帯で、美味しいお酒が手に入ります。そのため、国内のお酒業界のEコマース率は3%程度と言われています。
その中で私たちは、Eコマースに加えて、リッチ価格でお酒を提供しています。そのため、商品と一緒に体験を届けなければ勝負はできないと考えています。
お客さまへの体験という付加価値を提供する上では、私たちの作った体験もより良いものにレベルアップしていく必要があります。そして、その試行錯誤の過程によってブランドが作られていきます。
一般的な物作りに共通する部分として、お客さまの声を即日で反映し、改善できる部分は正直、多くはありません。しかしその事実が、お客さまの声を基に改善していかなくても良い理由にはならないと考えています。
商品やサービスを好きになってもらい、また買いたいと思ってもらえるかどうかはお客さまが思うことですよね。だから、買って頂いたお客さまに改善のポイントや次に繋がるヒントがあると思っています。
「koyoi」がブランドとお客さまに丁寧に向き合っている姿勢がお客さまにも伝わっているからこそ、ファンも声を届けてくれて、それにより商品がより良くなっていく好循環が生まれるのかなと思いました。
まずは私達が世界観をしっかり表現をした上で、その世界観を好きになっていただくのが最初のハードルだと思っています。
「koyoi」では世界観をどのような手段で伝える工夫をしているのでしょうか。
「koyoi」は、日々頑張っている皆さんの役割を横において、自分を癒したり、向き合ったりする時間の横にあって欲しいという想いがあります。その想いをクリエイティブで伝えるために「夢見心地」というテーマで非日常を表現しています。
注文から商品を開く瞬間までの演出も意識しています。たとえば、非日常の雰囲気に没入できるよう、商品に小説を同梱したり、商品の瓶のラベルの裏のデザインにもこだわり、通常の日常を少し特別なものにするような設計をしています。
素敵ですね。他にも世界観を表現する上でのこだわりはありますか?
オンラインショップもサブスクリプションサービスとしてパーソナライズできる機能はもちろん、「koyoi」の世界観を自由に表現できるクリエイティブ面を重視してecforceのカートを選びました。
オンラインショップのUX(ユーザーエクスペリエンス)も、箱に入れる体験をギミックで表現したり「koyoi」の世界観を実装できるのが当時はecforceだけだったのも選んだ理由の1つです。
「koyoi」はファンとブランドとの距離感の近さを感じます。世界観以外で、他のお酒のブランドと「koyoi」との違いをどのように考えられていますか?
出会い方の違いだと思います。
「koyoi」を知って頂いた方のほとんどはメディアやインフルエンサーからの紹介や口コミ経由です。しかし、「koyoi」を知ってInstagramに飛んで頂いても、リッチ価格帯ということもありすぐに購入につながるお客さまは多くはありません。そして、コンプレックス商材でもないので衝動買いにもなりづらい。
そのため、多くのお客さまは検討期間を経て購入に繋がるパターンがほとんどです。私たちが伝えるブランドの世界観や開発ストーリーと、お客さまそれぞれの「koyoi」の検討期間を経て、購入後のエンゲージメントが高まると考えています。
「いつか買いたいな」でその時は買わなくても、その「いつか」が購入に繋がった瞬間はエンゲージメントが即購入の時よりも上がる感じ、たしかにありますね…!
「いつか買いたいな」という話では、プレゼント需要も多いです。「koyoi」は保存料、着色料、人工甘味料を一切使わないナチュラル製法の労りのギフトとして誕生日や特別なタイミングで選んで頂くことも多いです。
そして、贈られた方が再度購入頂くこともあれば、別の方にプレゼントしていく数珠つなぎの出会いの循環が生まれています。
「戦略ミスだった」お酒のサブスクからの方向転換と失敗からの学びとは
「koyoi」の出会い方などのマーケティング戦略はサービスローンチ直後はどこまで考えられていたのでしょうか。
お恥ずかしいところ、「koyoi」はサービスローンチ直後は戦略はないに等しかったです。
サービスローンチ直後はサブスクリプションモデルを採用しており、SKUも当初から15種類も作りました。加えて、パーソナライズを行い、「あなたにあったお酒をお届けする」サブスクリプションモデルで始めたはいいものの、蓋を開けるとほとんどのお客さまはサブスクをしないんですよね。言ってしまえば、戦略ミスです。
だから、現在もメニューとして定期購入のプランはありますが、訴求としてサブスクリプションモデルでの販売はやめています。
※SKUとは…Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略で、受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位をさします。
サブスクリプションとの相性が悪かったのは、お酒業界のEコマース率が3%の低さも背景としてあるのでしょうか。
たとえば、サプリメントであれば継続して飲むことで効果が出てきますよね。一方、お酒は色々な種類を飲みたいというベースの需要があります。
そのため、お酒という商材とそれに対する人のニーズがサブスクリプションモデルに合っていなかったんです。だから、当時は全く売れず胃が痛い時期が続きました…。
そこからどのように、方向転換をされていったのでしょう。
単品リピートモデルにするにも、獲得CPAを合わせながらWebマーケティングで広告投資を回収できるかと言われると、コンプレックス商材でもなければ、高単価のラグジュアリー商品でもない「koyoi」にとってはリスクが大きいと考えました。
そのため時間はかかりますが、まずはPR戦略で認知を形成しながら少しずつファンの輪を広げていく戦略に切り替えました。そして、オウンドメディアや口コミを中心としたインフルエンサーマーケティングで後から広告投資を回収できるモデルに振り切ろうと決めたのがローンチから3ヶ月ほど経った時期です。
戦略の大幅な転換は、大きな決断だったのではないでしょうか。
様々な戦略や手段がある中、最も私たちらしく組織の得意な掛け合わせで強みを活かせる選択を考えた時に、私がPR領域の経験があったことと、取締役もインフルエンサーマーケティングを得意としていました。
マーケティング戦略を切り替えてからは、広告投資のようにすぐに回収できるモデルではないので、じわじわと伸びたり凹んだりを繰り返して直近1年ほどで色々な点と点が結びついてきている感じですね。
なるほど。しかしスタートアップだと、資金調達後は早期に結果を求められるものではないのでしょうか。
おっしゃる通り、D2Cのトレンドは過ぎてしまっているので、資金調達はすごく苦労しました。
しかし、「koyoi」は積み上げ式なので回収までの時間がかかることを説明した上で、ヘルシーという人間が求め続ける、半永久的になくならない市場規模があることと、お酒業界でアプローチしきれていない若年層の支持を圧倒的に得る「ヘルシー×お酒」のポジショニングが確実にあるというロジックでお話をしました。
その結果、少しずつ低アルコールといえば「koyoi」の名前が上がるようになってきていているので、これからも引き続き市場の確立は続けていくつもりです。
将来的に小売業として「koyoi」をコンビニなどに卸す未来について、どのようにお考えでしょうか。
現在、すでに100店舗ほどの飲食店に卸しています。事実、お客さまから「オンラインショップ以外で購入できますか」というお声や、飲食店からの取り扱いの要望を頂いていたこともあり、2023年から卸先の開拓に力を入れ始めています。今後も店舗で「koyoi」を目にして頂く機会は増やしていく予定です。
しかし、私たちはスーパーマーケットに並ぶ日常使いの低価格帯のお酒とは戦ってはいけないというのは変わらず気をつけています。
どのあたりに気をつけているのか、具体的にお伺いしたいです!
スーパーの棚に並んでいる数ある低価格帯の商品から見つけて頂くという戦い方ではなく、指名買いで「koyoi」を選んでもらうようにしなければならないと考えています。
そのため、卸している飲食店も、高級飲食店やTRUNK HOTEL(トランクホテル)など世界観のあるカルチャーホテルなどに絞っています。20代〜30代のターゲット層が憧れる場所を中心に、これからも徐々にオンライン以外の販売経路を増やしていきます。
大手メーカーや自治体と共に歩む三方良しの「koyoi」の展望
カルチャーホテルなどラグジュアリーな場所に卸したいと思っても、卸先も商品を選びますよね。その中でどのように卸先の開拓を進められていったのでしょうか。
卸先にも商品のニーズがあったからです。飲食店側としても昨今はお酒を飲まない方が増えてきている影響で、ノンアルコールを提供している飲食店も増えました。お酒を飲みたいけど酔いたくないというお客さま側の声の一方、お酒のほうが価格帯を上げることが出来る飲食店側の事情もありました。
また、インバウンドではカクテル文化が発達している一方、日本ではサワーが主流でカクテルの種類が少ない実情も、ボトルでリッチ価格帯の低アルコールカクテルというポジションとニーズががっちり合ったんですよね。
もう半分は営業担当のガッツですね(笑)隙あらば、知り合いに卸先の知人がいないかを聞いたり、日々問い合わせを行った積み重ねです。もちろん、飛び込み営業もしますし、泥臭くも自分の足で様々なチャンスを探りにいって掴みに行っただけです。
卸先の開拓に付随して、お酒の製造を委託している工場の開拓についてもお伺いしたいです!
「koyoi」の商品開発は、最初に私たちでベースのお酒から、組み合わせるフルーツまでベースとなるカクテルレシピを作り、そのレシピを酒蔵と一緒に再現する2段階で成り立っています。
そのため、いわゆるOEM(Original Equipment Manufacturing)で工場に委ねるやり方ではなく、私たちが作りたい味を一緒に作ってくださる酒蔵を見つける必要があるため、酒蔵のパートナー開拓はとても大変なんです。
酒蔵は日本酒のイメージだったのでカクテルも作れるのは発見です。
酒蔵にとっても新しい挑戦だと思います。だから、「できない」と断られることの方が多く、100件の酒蔵に電話をかけて1件興味をもってくれたら良い方ですね。
しかし、商品開発は地方の酒蔵とやるというのを決めているので、サービスローンチ初期から現在でも、新規の酒蔵に問い合わせをしながらチャンスがあればすぐに現地まで会いに行き「koyoi」の想いなどを説明しに回っています。
地方の酒蔵と決めているのはなぜですか?
お酒業界は素晴らしい技術を持つ、歴史のある中小企業の酒蔵が多いです。しかし、各酒蔵では、後継者問題や年々減少する日本酒の販売数の低下に伴い、何かしたい気持ちはありながらも、何をしたらよいのか分からないジレンマを抱えている課題を感じています。
このビジネスを始めてから、私たちが企画を持って一緒にビジネスを行うことで、酒蔵の収益になるのはもちろん、酒蔵の周りの農家など地域に収益を還元できるのではないかと思っています。この三方良しのサスティナブルなビジネスモデルは私たちの会社としての社会貢献度はもちろん、私個人としても絶対にやり続けたいと思いました。
最近では大手ドリンクメーカーも低アルコールビールの新商品を発売するなど、低アルコール需要を感じています。一人の消費者として、現在の低アルコール需要の前にアルコール度数8%以上のストロング缶が流行った感覚があったのですが、石根さんは社会的ニーズの変化をどのように見られていたのでしょう。
お酒の事業を始める前から「食」という分野が今後ますますロングテール化すると想定していました。そのため現在も、高アルコールドリンクの売上は伸び続けています。一方で、低アルコールの需要も伸びていており、これも様々なシーンでの、飲み方が多様化した影響だと考えています。
高アルコールなのか、低アルコールなのかの二極化ではなく、お酒の飲み方の多様性は価値観の多様性にも紐づいており、細分化しているのではと考えています。
そこまで確信に近い未来を想定されていた理由はありますか。
世界的に、日本は「食」に対するリテラシーが高いとは言えませんが、必ず追いつくと思います。たとえば、ベジタリアンやビーガンのように、洋服を選ぶ感覚で「食」を選ぶ時代が10年後に日本にも来ると思ったからです。
洋服のブランドを選ぶように、自分の価値観やスタイル似合わせて多様化する社会において、「食」の価値観や可能性を提供できる会社にしたいと思っています。
低アルコールドリンクでの「koyoi」の認知度が広がってきた今だからこそ、見えている未来や、今後の展望があれば教えてください。
日本市場よりも海外の方が価格帯が上がるだけではなく、明確に市場があるのが分かっています。そのため、近い未来に海外展開を目指したいです。
加えて、国内でもよりたくさんの人に「koyoi」を手にとってもらえうようにしていきたいと思っています。
今まで、ターゲットを絞った戦略でマーケティングを行っておかげで認知が広がり、広告投資も回収できる基盤も徐々にでてきました。そのため、既存の広報と広告の両軸を回していくチャレンジができるようになったので、これからさらに成長曲線を伸ばすことができるように頑張ります!
今後さらに「koyoi」を目にする機会が増えてくるということですね!
「心と体を満たすアルコール文化」という私たちが掲げるミッションは私たち1人では作れないと思っています。そのため、大手メーカーさんや自治体とのコラボを進めているので、商品のラインナップも増やしていく予定です。
自分たちで頑張るだけではなく、大手メーカーさんの販路や自治体の地域に根ざした繋がりなど、それぞれの強みが繋がり1+1=2以上になるんですね。
「koyoi」がプロダクトアウトの商品ではないからこそできる、エンゲージメントの高さと世界観が私たちの強みです。
自治体や大手メーカーの持つ、お客さまとのエンゲージメントやファン作りの課題感に「koyoi」の強みが上手く合わされば、お互いに成長スピードは今までよりも加速していくでしょう。
今なら、私たちがこれまで信じてやり続けていたことが間違いではなかったと言えるのかなと思っています。
これからの「koyoi」にますます目が離せません!すてきなインタビューを本当にありがとうございました!
編集後記
「koyoi」の提供する「夢見心地」のふわふわとした世界観を無意識に石根さんにも重ねていたインタビュー前。しかし、インタビューを通じて石根さんの柔和な表情の下に垣間見えるガッツの強さやがむしゃら感は、いい意味でイメージを裏切られました。しかし、それは爽快で気持ちよささえ感じるインタビューとなりました。
「koyoi」は数年以内に低アルコール飲料のNo.1を目指すことと、「お酒の多様性を作る会社」になるビジョンを語る石根さん。登る山が明確になった「今」が圧倒的に楽しいと胸を張って言えるというインタビューでの言葉がすごく印象的でした。
独自のマーケティング路線が徐々にカタチになってきていると語る「koyoi」が今後、様々な場所で出会える未来をとても楽しみにしている自分がいました。
文 :杉山 美和
写真:関 大二郎