なぜ商品が売れるのか?月商100万円まで売りげを伸ばすEコマースと伸びないEコマースの違い

三浦 卓也さん(@miuratakuya_hac

ケトジェニックダイエットと出会い10kgの減量に成功した自身の経験を基にバターコーヒーを始めとする健康食品の販売を手がけるミウラタクヤ商店を開設。日本で初めてのShopify認定教育パートナーに選出され、現在はひとりEC研究所のコミュニティ運営から、EC家庭教師としても活動中。著書「ひとりEC個人でも売上を大きく伸ばせるネットショップ運営術」に次ぐ、2冊目となる「月商100万円を達成する 最強のEC運営術」を2024年2月に出版。

競合増加や広告経由での獲得単価高騰による売上悪化を乗り越えた一手とは

前回のCOMMERCe+の取材では”Shopify”の活用方法や、ひとりEコマースを運営している三浦さんならではのファンが集まる丁寧なコミュニケーションについてお話頂きました。第2回となる今回は、ご自身で「苦難の年だった」と振り返る2022年を経て三浦さんがさらに進化しアップデートされた、Eコマースのノウハウをお伺いしたいと思いました!

X(旧Twitter)の投稿をひろって頂きありがとうございます。前回のインタビューとは一味違った内容をお話しできるようにがんばります!

単刀直入ですが…ご自身で「苦難の年だった」と振り返られている背景には何があったのでしょう。

ミウラタクヤ商店は自社サイトとAmazonの2つの販売チャネルをもっています。2022年はMeta広告の獲得効率が悪化し、自社サイトでの売上が低下しただけではなく、Amazonでも自社商品と同じような商品の競合メーカーが増えるなど苦しい時期が続きました。

売上低下の中でも、既存のお客さんからは継続的に購入いただいていました。しかし、購入までのコミュニケーションが取りづらいAmazonにおいては類似品の出品による競合増加や価格競争の影響で新規のお客さんの売上が顕著に落ち込みました。

そこから約1年間、広告文などクリエイティブの試行錯誤を行いましたが思うような成果には繋がらず、気持ち的にも「ちょっとまずいな…」と。

その厳しい状況をどのように打開したのでしょう…?

「世の中で求められてること」と「自分に足りてないこと」を改めて考えたときに「まだ人柄が足りてない」と思ったんです。それからは、いきなり商品を売ろうするのではなく、まずは人間関係を構築することから始めようと、SNSの発信に注力しました。

ミウラタクヤ商店といえば、前回の取材でお話頂いた「ウェットなコミュニケーション」が印象的です。しかし、それでもまだ人柄を出し切れていなかったということでしょうか…?

従来のコミュニケーションが商品を知ってもらう広告や購入後のコミュニケーションとすると、商品の購入検討をして頂くよりも前のコミュニケーションは改善の余地があると思いました。

だから、Instagramでフォローしてもらった一人ひとりに「初めまして!なんでフォローしてくれたんですか」とDMを送ることをやっていました。

一人ひとりにDMですか…!?

はい。気になっている商品のメーカーさんから購入前にDMが届いたと想像してみてください。

購入前の疑問や質問の全てに私が回答をするので、お客さんには安心感が生まれます。その時点で、他の商品よりも格段に良い印象を与えられていると思うんです。

すると面白いことに、獲得効率が悪化していた広告のCPA(顧客獲得単価)も下がり始めたんです。

面白い変化ですね!しかし、何よりもコミュニケーションに重きを置いてEコマースを運営されている三浦さんが、現状のやり方を疑い、改善の余地を見出すことができたきっかけがあれば教えてください。

Meta広告の獲得効率が悪化したときに、販売を広告のアルゴリズムに依存しすぎていたと反省したんです。広告経由で売れていたのは、広告の機械学習によるマッチング精度のおかげであり、本質的に売れていたのではないと気づきました。

それからは、広告のアルゴリズムに依存しないブランドや人間力を高めていく戦略に変えようと思ったんです。

「人間力」についてもう少し詳しく教えてください。

InstagramでDMを送り始めてから、送ったDMにちゃんと反応が返ってくることに驚いたんです。その理由を考えたときに、いきなり商品を購入するよりも、まずはその人を知ってから様々な交流を通じて信頼を得た上で購入に至るコミュニケーションをお客さんは求めているのではないかと思いました。

また、ミウラタクヤ商店ではLINE@(ラインアット)の時代から公式LINEをやっていますが、LINEの登録者数は増えているのに開封率や相談件数が昔よりも少なくなった時期がありました。それは、発信している情報の質が下がり機械的な受け答えになっていたことで、お客さんの情報に対する執着度が低くなってしまった原因が考えられます。

それからは、メルマガやDMを送るなど効率をハックするよりも、人と人が繋がるエモーショナルな部分でモノが売れることが理想の姿だと改めて再確認できました。

三浦さんの1日の業務の中で、1対1のコミュニケーションにかける時間はどのくらいですか?

軽めの相談もあれば、定期的に連絡してくれるお客さんなど1日約50人とやり取りをしますが、トータルで2時間ほどですね。

ひとりEコマースだと、お客さんとの連絡以外にやらなければいけないことも多く、2時間のコミュニケーションの優先度を下げてしまう方も少なくないのでしょうか。

そうですね。しかし、在庫表の管理や配送連絡などのオペレーション業務は売上げに直接的に関係ないですよね。

Eコマースの業務は、日々パソコンに向かって管理画面とにらめっこしている時間も多いので、オペレーション業務で仕事した❝つもり❞になってしまうことも理解できます。しかし、会社の営業担当の人が「忙しいから営業できません」とは言わないですよね。それと同様にEコマース運営でも営業のリソースは削ってはいけないと思うんです。

…ギクッ!ぐぅの音もでません。

もちろん、オペレーション作業も必要不可欠です。しかし、その時間があるのであればお客さんのことを考えたり、交流したほうが売上にも直接的に繋がると私は思います。

Eコマースの売上は営業活動との強い相関関係があります。良い商品という前提はありつつ、営業をしなければ売れるものも売れないので、営業力は一生磨き続けなければいけないと私は思います。

「買い続けてくれる理由」はあるか。段階的に売上を伸ばしていくためのセオリーとは

コミュニケーションの重要性はとても理解できました!三浦さんの著書「月商100万円を達成する 最強のEC運営術」では売上の障壁を10万、30万、100万円と3つの事業者規模でまとめられています。コミュニケーション以外で、各売上規模の障壁を超えるためのセオリーなどはありますか?

売上の金額はあくまでも目安ですが、1つの事業として成立させるために必要なことや、これができるとさらに売上は伸びるという段階的なセオリーはあります。

それぞれの売上規模の障壁をお伺いしたいのですが、三浦さんのところに相談に来られる方がつまずきやすいポイントやよくある勘違いなど共通点があれば教えてほしいです!

売上が立てられていない事業者さんの共通点は手数が少ないことです。

たとえば、メルマガをやっていなかったり、SNSの投稿も週1しかしていないケースが多いです。

なるほど。まずは、やることをちゃんとやることが最初の障壁ということですね。

はい、やるべきことを当たり前にやらないと売れるものも売れません。その上で、売上10万円から30万円の最初の障壁は「買い続けてくれる理由」があるかです。

売上10万円であれば、お祝いなどの単発注文などで偶然に達成できることもあります。しかし、単発でたまたま買ってくれたとしても、そのお客さんがその後も自分のショップで買い続けてくれる可能性は高くはないでしょう。

確かに。商品の満足度が格段に高いなどの理由がない限りはリピートしないかもしれないですね…。

お金をいただけることには必ず理由があります。そのため、まずはその理由の解像度を上げて「売れる理由」を明確に答えられるようにすることが売れるEコマースの第一歩ですね。

第一歩となる売上10万円の障壁の先、売上30万円まではどのようなことが障壁になりうるのでしょう?

売上30万円までの障壁は、お客さんとのコミュニケーションです。要するに、メルマガを送ったり、DMを活用した接客ができているかがポイントになります。

ミウラタクヤ商店では、新規と既存のお客さまへのコミュニケーションの仕方を変えられたりしていますか?

明確に、新規と既存のお客さまへのコミュニケーションは変えるべきだと思います。

新規のお客さまは広告を通じて、様々な訴求やクリエイティブを変えています。一方で、既存のお客さまへは、話しかける機会を増やすようにしています。ミウラタクヤ商店では、会話量が増えると売上が増える相関関係があるので。

最近は、動画の投稿にも力を入れている印象を受けます。それも、お客さんへのコミュニケーションの違いを意識して始められたのでしょうか。

昨年ダイエット研究家としてテレビに出演させて頂いた際、既存のお客さまから「動いている三浦さんが新鮮でした」と出演後にたくさんの反響を頂いたんです。

おそらく、私のことを知らない人が動画を見ても何とも思わなかったと思います。しかし、普段からたくさんコミュニケーションを取っていると思っていても、私のことをフォローしてくれてる人が動画を通じて、これほどの反響に繋がることが面白い発見だったんです。

テレビ出演をきっかけに、動画にすることで提供できる情報の質や量も変わることを体感し、既存のお客さまにより親近感を持ってもらえるようにこれからは動画も頑張りたいと思っています。

ここまでをまとめると、売上30万円までは売上を伸ばしていくための基盤作りが重要ということですね。その後、売上100万円まではどのような伸び方になるのでしょう?

売上30万円から100万の障壁は、「買い続けてくれる理由」に加えて「事業として成り立たせる意識」が大事になります。

近所の個人商店を想像してください。個人商店にとって売上100万円はとても大きな金額です。自分がお店の店主だったら、銀行に融資を借りたり、事業計画に沿って仕入れをしますよね。しかし、ネットショップが無料で開設できてしまうからなのか、実店舗だと当たり前に投資することも、ネットショップになった途端に、投資を渋り「事業として成り立たせる意識」が薄れてしまう事業者さんが多いです。

「事業として成り立たせる意識」について、もう少し詳しくお伺いしたいです。

ネットショップで陥りやすい落とし穴が、削減するコストを見誤ってしまうことで、売上を伸ばすために「投資」よりも「コスト削減」に意識が向いてしまっている場合があります。

たとえば、Shopifyを使うことで効率化はもちろん、売上も上がることが過去の経験から明白であるにもかかわらず、相談者の方に「Shopifyを始めましょう」と伝えると頑なに固定費を嫌がる方が多いんです。

理由を聞くと、ネットショップは無料でできる認識の為、ネットショップを運営するためのツールはコストと捉えて削減したがるのですが、結果として固定費を削減すると売上が伸びないジレンマに陥ってしまう事業者を多く見ています。

なるほど…!そこの認識の差はどのようなことから生まれると考えられますか?

精神論になってしまうのですが、誤解を恐れずに言うとガッツだと思います。

飛び込み営業やの架電リストにひたすらテレアポをした営業経験がある私からすると「架電リストが少なくなったので電話してないです」とは言わないのに、インターネットの環境になると言い訳ができてしまう側面を感じます。

また、売上に悩む相談者さんに「LINEやメルマガの配信頻度を増やしましょう」と伝えると「配信頻度を上げるとお客さんに嫌がられて、ブロックされてしまいませんか」とやりたがらないことも多いんです。

しかし、私よりも年商大きい事業者さんとお話しすると手数の多さや、言われたことをまずはやってみる実行までのスピード感など、桁違いのメンタリティに尊敬します。私自身もまだ頑張らないとと身が引き締まりますね。

精神論も一理ありつつ、これから「月商100万円」を目標とする事業者さんに「これだけは伝えたい!」というアドバイスがあれば!

「月商100万円」の達成は、売上10万円、30万円の壁を超えた積み重ねの先にあります。

EC家庭教師でも必ず「あなたの商品はなぜ、売れてるんですか?」と聞いています。すると、約9割の事業者さんは答えられないんです。

Eコマースに限らず「お金を稼ぐ」ということは、誰かの役に立つことと同義と考えています。だから、まずは「自分の商品が売れる理由」を答えられるようにすることは全ての事業者さんに共通して伝えたいです。

「訴求軸」と「伝え方」で劇的に変わる、売れる理由の作り方

「買い続けてくれる理由」=「売れる理由」が大事ということはわかったのですが、様々な商品や情報が溢れる時代において、ミウラタクヤ商店では具体的にどのように「理由」を作りをされているのかお伺いしたいです!

商品そのものがユニークで独自性のある競合の少ない商品であれば、ある程度売れる場合もあります。しかし、広告を配信していても思うような成果が出ていない事業者は「売れる理由」が不足しているか、「伝えきれていない」場合が多いです。

売れる要素を細分化すると、「人」に求めるか「モノ」に求めるかの2つの側面があります。

ミウラタクヤ商店では、主にバターコーヒープロテインを販売していますが、「人」で売れてる理由は大きいと思います。それは、私自身のダイエットの経験に共感して頂いたり、ウェットなコミュニケーションから信頼をいただいて購入していただけるお客さまが多いからです。

もちろん、商品の品質にも自信をもっていますが、類似品が出回ってもリピーターのお客さまは「モノ」よりも、私を含めたコミュニティの「人」が圧倒的に買う理由になっていると分析しています。しかし、今以上に売上を伸ばす場合は「人」だけではなく「モノ」の訴求も必要不可欠です。

そのために、一般的なプロテイン商品と比較して含まれている栄養素の多さや、サラダ1皿分の栄養をが摂れるなど様々な伝え方を試したこともありましたが、自社サイトで売れる商品もAmazonでは全く売れないこともありました。

「モノ」は商品力そのものだけではなく、どのように伝えるのかも大切ということですね。ちなみに、Amazonで全く売れなかったプロテインはその後、どうなったのでしょう?

プロテインの訴求軸を試行錯誤しているとき、購入頂いた方から「断食の時に飲んでます」という口コミをヒントに「断食用プロテイン」というネーミングに変更したら、今まで売れなかったAmazonでの売り上げが10倍ほど改善しました。

「断食用プロテイン」というネーミングもキャッチーですよね!「人」を売れる理由にするよりも、「モノ」の訴求を考える方が短い期間での検証がしやすいとのでは思いました。三浦さんは、「人」と「モノ」のどちらから着手するほうがよいとアドバイスされることが多いですか?

仰るとおり、「モノ」のほうがテストはしやすいので、これからEコマースを始める方には「モノ」の訴求軸をまずは考えてもらうことが多いです。

しかし売上がゼロの場合はすぐに売上げに繋がらずとも、「モノ」だけではなく、「人」にも注力したほうがよいとアドバイスをしたりもします。

なぜなら、「人」のブランドは一朝一夕で完成するものではなく、時間がかかります。そのため類似商品が多い商品は特に、訴求軸を変えるだけではなく、自分がインフルエンサーになって売ることが必要になる場面もでてきます。

そのため、「モノ」と「人」はどちらか一方だけではなく、両輪で走り続けることが大事ですね。

売上ゼロから100万円まで伸ばしていくためのセオリーから、具体例まで余すことなくお伺いさせて頂きありがとうございます!!これから自社サイトの売上を伸ばしていきたいと考えている方はもちろん、これまで順調に売上を伸ばしている方にこそ改めて1つ1つのセオリーを振り返るきっかけになるインタビューだったのではないでしょうか!本日は貴重なお時間をありがとうございました!

編集後記

ミウラタクヤ商店のLINEコミュニティ

三浦さんのもとにどのような質問が届くのかとお伺いしたところ、動画に関する質問が増えているとのことで、「Eコマース業界も動画の時代ですか?」と三浦さんに質問をしたところ「動画のほうがテキストコンテンツと比べて同じ情報を与えられていても、真新しさを感じるメリットはある一方で、動画はやることが目的ではなく届けるための手段の1つ」と答えていただきました。だから、「動画を実施する手段と目的が入れ替わってしまうと、動画をやっても上手くいきにくい」と、ご自身の経験を踏まえて回答していただきました。

お店のお客さんの年齢層によって慣れ親しんでいるコンテンツフォーマットは変わります。たとえば、40代以上のお客さん層は、アメーバブログなどのブログ文化で活字を読むことに慣れている人が多く、メルマガなどのテキストコンテンツのほうが伝えたいことを届けやすいのではと語る三浦さん。年齢層によってはテキストよりも動画の方が伝わりやすい場合もあるので、ご自身の店舗に来てくださる年齢層に合わせて伝える手段を考えてみるのが良いと教えていただきました。

検索行動と同様に、読者が能動的になるテキストコンテンツの面白さを再認識し、動画の時代と言われる今だからこそ、改めて「テキストの力」を再確認できたと語る三浦さんとのインタビューは、三浦さんご自身が実際に手を動かしているからこその濃いエピソードが溢れており、あっという間に2時間が過ぎてしまっていました。

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文 :杉山 美和
写真:関 大二郎

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